きっかけは単純なことで、お小遣いの使い方を誤ったからだ。
過去の自分の経験として、もらったお年玉というものは、親が預かっておいて、教育資金や後々の子供のために使う、みたいなのがあって、手元にくることはほとんどなかった。
もちろんそれらは進学や後々自分があれやりたいこれやりたい、と思ったときに親が持ち出し資金のひとつとして渡してくれたので結果的に役立っているけれど、欲しいものを買う、という経験をしたかったというのもあって、子供に自由に使えるお金を与えて、一緒にインターネットを見て、「ほしいものを買う」という経験を一緒にしてみた。
子供はずーっとエヴァンゲリオンにハマっているので、エヴァンゲリオンの玩具が欲しいという。
エヴァンゲリオンは残念ながら子供向けではない…ロボットっぽいアニメで主人公は中学生なのに対象者は大人向けという、面白いアニメだなーと思う。
子供がなぜエヴァンゲリオンにハマったのか、は、そもそもシンカリオンというアニメを見ている中にエヴァンゲリオンがでてきて、「エヴァンゲリオンって何?」というところから始まっている。つまり犯人はシンカリオンである。
こんなのどう考えてもかっこいいので、欲しいに決まっている。
シンカリオンについては、祖父母が買い与えたりしていたので結構持っていたけれど、本人的に飽きていたのか、エヴァンゲリオンが欲しいという。
シンカリオンのおもちゃを見ると、おもちゃの本体は傷だらけだ。
それもそのはず、シンカリオンは変形ロボなので、ガチャガチャと装備を外したりくっつけたりするのにものすごく傷だらけになるし、「勝負だーーーー!!!」といいながら空を滑空し、階段から落下し、様々な敵と戦わされた結果ボロボロなのだ。
一方エヴァンゲリオンは大人のおもちゃだ。
ざっと調べたけれど、シンカリオンみたいに変形して遊べるものは少ない。飾るだけのフィギュアだ。どうしても一体ほしいというのでフィギュアを買ってきてあげたのだが、いきなり腕をへし折り、初号機の大切なトサカをへし折った。
トサカがない初号機はどこか情けないので、最近買ったばかりの接着剤で応急処置をしたけれど、なんか情けないままだった。
そういう遊び方をするならエヴァンゲリオンは向かないかもよ、とアドバイスをしたのだけれど、エヴァンゲリオンが欲しいのだという。
どういうエヴァンゲリオンが欲しいのかさっぱりわからずにいたところ、子供はYouTubeでの開封チャンネルを元にプレゼンをキメてきた。
なるほど。YouTuber様様である。
大きさや、どんなギミックか、細かいパーツはあるのか値段は…など、大体YouTuberが説明してくれた。子供め、自分が欲しいものをYouTuberに説明させるとはなかなかやりおるな…
YouTuberの「これはこうなっていて~」「思っていたよりも小さいですねー(笑)」と感想を述べていくのをみながら、子供も「思ったよりも小さいんだって!!!」と私に同意を促してくる。
思っていたよりも、って、そもそもどんな大きさを想定していたのだろうなんて無粋なことを考えながらおとなしくYouTuberのプレゼンを視聴し終える。
最後に概要欄から商品リンクをどうぞ!!! と言われて便利である。ただ安いところで買いたいので商品名を元に色々検索をかけまくった。
検索した結果、どうやらまだ発売前…? 発売前なのにこのYouTuberはなぜ紹介を?販売元? とかよくわからないことを考えながらも、子供と相談する。
「僕、箱買いをしたいんだ」
「箱買い…!?」
なんと、この年齢にして箱買いをしたいという。私が箱買いをしたのは自分がバイトをはじめて、ブラックサンダーのあの箱をひと箱買ったのがはじめてだ。
ひとつの箱ぜんぶを買うという独占欲が満たされるこの神秘的な購入方法はとんでもない麻薬なのだが、8歳のうちにそれをしてみたいとはなかなかやりおる。
私はポケモンシールだって100円3枚入りのを1か月のお小遣いのうちに1回だけ買ってたしなんでいたというのに、お年玉というでかい予算を持つ彼は、エヴァンゲリオンの食玩フィギュアを箱買いしたい、というのだ。
というかエヴァの食玩って何だろうと思って調べると、食玩というのはもはや名ばかりで立派なフィギュアだった。ガムがひとつ、ついてくるらしいのだが、ガムがついてくるだけでフィギュアとして売るのではなく食玩になるのだとしたら面白い。
ただ、このフィギュアはひと箱買うだけでは完結しない。
なんとエヴァンゲリオンの骨組と、外側の換装パーツに分かれており、2種類を買って、合体(フィギュアというよりプラモに近い)させないと完成しないし、何ならロンギヌスの槍とスタンド自体も別箱入りである。笑った。
確かにこれならもう…バラで買うよりも箱で買ってしまった方がコスパはよいかもね…と思った私は「箱で買ってみたら」と促した。
早速、予約をする。
しかし子供、まだ予約という概念がわからなかったようで、注文したと伝えたところ、明日にはくるかな? とワクワクしていた。最近はAmazonやヨドバシをよく使っているので注文すると翌日にはもう届く。
子供にとってはそれが当たり前の世界観であり、エヴァンゲリオンの食玩も明日には届くとそう考えたのであろう。
「これは、まだ発売されてない玩具だから発売日以降に届くよ」
「発売日以降って何!? 今すぐほしいんだけど!?」
無理である。
そうか、君はまだ発売日という概念を知らなかったのだなあ…。懇々と説明するが、理解不能といった様子である。
「どうして!? 今すぐほしいんだけど…ちょっとお母さんとってきてよ」
「とってくるの? どこに?」
「きっとお店にいったほうが、早いと思う…」
そういうことあるよね。ネットで注文するより、現地にいって現物みてその場で支払って買ったほうが早いときもある。でも、そもそもこの玩具はまだ発売日前なのだ。
無理である。
そう伝えところ、半泣きになってしまった。どれだけエヴァンゲリオンが僕は欲しいのか。その欲しさを切ない感じで伝えてくる。欲しくなってしまったら、もう今すぐ手元にないと無理なのだ。今すぐほしいのだ。わかるよ、わかるよ。
無理である。
なぜなら発売日前だからだ。大人である自分にとっては一日が本当に早すぎてこのままだとあっという間に過ぎていくという気持ちであるけれど、子供にとっては本当に一日が長すぎるのだろう。それでも発売日まで一週間、といったところである。頑張って待ってほしい。
そして一週間後にそれは届いた。学校に行っている間に届いたので、学習机の上に置いておいてあげた。本人が帰ってきて、ランドセルを置きに学習机についた瞬間に置いてあるブツに気づいた。
「もしかしてこれはぁ…!?」
念願の、アレである。しかしアレを開封前にやることがいっぱいだった。まずはプリントの提出、連絡帳の提出、宿題の共有、さらに毎日やることになっているプリントへの挑戦…それらがすべて終わってから、エヴァンゲリオンを堪能できるのだ。
エヴァンゲリオンを組み立てた彼は、本当に誇らしそうだった。よかったねと伝えてあげたい。ただ衝撃の一言を解き放った。
「僕、違うものが欲しいんだけど」
「エヴァンゲリオン買ったから、もうお金ないでしょ」
「お母さんはあるでしょ?」
「欲しいものはお小遣いの範囲で買って」
「だからもうエヴァンゲリオン買ったからお金ないんだよ!!」
「じゃあ次のお小遣いまで待とうよ」
「え!? 待てないよ!? あ~もう、僕、お金稼ぎたい!!!」
8歳にしてお金を稼ぎたい、という発想ができる子供に素直に感心した。
アルバイトをして、たくさんお金を稼いで、ほしいものを買うらしい。何歳になったらアルバイトできる? と聞かれたので、高校生からならできると伝えました。
なお、私も親にこういう風に交渉するのが面倒臭くてバイトはじめたので、バイトするきっかけが何となく似てるな…と思ったりしました。
携帯代金を自分で払うのにバイトしはじめたり等。
高校生になったら携帯代金は自分でバイトして支払ってもらおうかな…